FC2ブログ


スポンサーサイト

Category: スポンサー広告  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 --_--_--

誕生日

Category: 他ゲーム  

2015/2/22 ラヴコレクション2015にて配布したペーパーSS
明治東亰恋伽・音芽 
音二郎さんの誕生日から数日後のこと。ラブコメ。




 

 誕生日


「はい。音二郎さん」
 可愛らしい色合いの包みを差し出された音二郎は、まじまじとそれを見つめた。己の前にあるということは、自分への贈り物なのだろう。
 つい不可思議な感覚になったのは、包みの色の所為かもしれない。女性への贈り物であるのならば納得のゆく、淡い桃色をしていたからだ。これで、音奴姐さんと芽衣が口にしていたならば、途方に暮れていたに違いない。
 恋人同士となっても、さして変り映えのない、目の前にいる愛らしい存在の態度に、時々、未だに男として見ていないのでは、と疑ってしまう程である。
「遅くなってしまって、すいませんでした」
「……知ってたのか」
 おずおずと告げる姿に、はっとした。
 これの意味するものは……。
「もちろんですよ。忘れるわけありません」
 自信満々の芽衣に、音二郎は、込み上げた嬉しさを噛み締める。
 すっげえ抱き締めたい…っ!
 大人の余裕などかなぐり捨て、想いを行動に移してしまいたい衝動に駆られる音二郎。
「ありがとう、芽衣。開けてみてもいいか?」
「どうぞ」
 受け取り、包みを開けてみる。と、でてきた物に、眉根を寄せた。
 一体、何だろうか? 
 疑問は、自然と声になっていた。
「……これは?」
「大福です」
「だい…ふ……く……」
 言われてみれば、大福だ。大福以外、考えられない。大福でないとするならば、これは、ただの白くて丸みを帯びた塊になってしまう。
 おかしな思考が音二郎の脳裏に渦巻く最中、芽衣は、照れを含ませた声色にて。
「見た目は、ちょっと悪いですけど、味には自信ありますから。チョコレートが貴重品だと聞いたので、あんこを代用したんです。それが大福になっちゃったのは、私の好みといえば、好みなんですが……」
 誤魔化しもあるのか。一人、すらすらと言葉を並べていた芽衣は、大福を黙って見つめ続けている音二郎に首を傾げる。
 瞳を瞬かせると。
「どうしたんですか?」
「あ…いや。誕生日の贈り物に大福ってのが、随分と斬新だな、と」
 今、彼は、何と言ったのだろうか。
 聞き間違いでないとするならば………
「誕生日?」
「は?」
「えっ?」
 互いに疑問を貼り付けた顔。
 誰かが見ていたのなら、酷く間抜けな光景に呆れていたかもしれない。
「つかぬ事をお伺いしますが。音二郎さんの誕生日って……」
「二月八日」
「今日は……」
「二月十五日」
 音二郎の誕生日、の一週間後である今日。
 が、己が渡した大福が意味していたのは、昨日のバレンタインデーの替りとなる品物で。つまり、これは。
「あぁああーっ! あ、あのっ! わ、わわわわたしっ」
「いや、いいんだ。教えてもいないのに知っている方が、可笑しな話だからな」
 慌てふためく芽衣を目の当りとし、そもそも、なぜそう思ってしまったのだろう手前勝手だった、と音二郎は、苦笑を浮べた。
 告げていない誕生日を芽衣が知る筈がないというのに、だ。
 取り乱したまま。
「で、でも、そうだと思ったんですよね?」
 チョコレートが貴重品なのだから、バレンタインデーがあるわけがない、となぜ思わなかったのだろうか。あまりにも情けなくて、泣きたい気持ちとなる。
 大きな身振り手振りつきで話す芽衣は、幼子に似ていて。落胆は、いつしか音二郎の中から、綺麗さっぱり消え失せていた。
 惚れた弱み、ってやつかもな。
 密やかに笑い、触り心地の良い頭にぽんと手を置く。
「鏡花ちゃんから聞いたんだと、勝手に勘違いをしていた俺が悪い。お前は、なーんにも悪くねえよ」
 数度軽く撫でた後、そっと芽衣の顔を覗き込む音二郎。
 これで、元通りになってくれりゃいいんだが。
 胸中で呟き、大福へと視線を落とす。
「んで、チョコレートを贈るってのは、何だ?」
「え、えっと…それは、ですね」
 芽衣は、バレンタインデーのことを音二郎に説明した。好きな人へチョコレートを贈る日だ、と。
 なるほどなあ、と呟き。
「チョコレートをあんこにして、大福か。お前らしいな」
 双眸を細め笑う音二郎に、芽衣は、唇を歪める。
 怒ってないみたいだけど…呆れては、いるだろうなぁ。
 恥ずかしさも相まって、頬が徐々に熱を帯びてくるのを自覚した。
「ん! 美味い」
 ……良かった。これで、不味い、って言われたらどうしようかと。
 大福を食べる姿を瞳に捉えながら、芽衣は、名前を呼ぶ。
「音二郎さん」
「なんだ? お前も食うか?」
「くれるんですか! そ、そうじゃなくって!」
 うっかり頷いてしまった芽衣は、はっとし、伝えたかった言葉を紡ごうと口を開けた。が、そこに押し込まれたのは。
「ほい」
「むぐっ」
 甘い大福の一欠片。
 美味しい。甘くて美味しい大福の味っ! 
って、そうじゃないでしょ!
 芽衣は、仕切り直しとばかりに、先よりも大きな声で音二郎を呼んだ
「音二郎さんっ」
「まだ欲しいのか?」
「違いますっ! 誕生日の…贈り物…の、ことなんですけど。今からでも間に合いますよね? ね!」
 一週間過ぎてしまったけれど。
「何でも良いので言って下さい! 遠慮無くっ」
 ぐっと両の手に握り拳を作ると、語気を強める。
 が、はたと気付いた。食べかけの大福を手に持つ音二郎の表情が、悪戯を仕掛ける時や、意地の悪い文言を口にする時のそれに似ていることに。
「……なんでも、ねえ」
「でっ出来る範囲内に…なんでもっ!」
 うっかり裏返ってしまった声に、芽衣は、即座に唇を手で覆い隠す。
 ころころと変わる芽衣の仕草と顔。
 つい、音二郎は、盛大に吹き出してしまった。
 くつくつと笑いながら、ぴん、と人差し指で芽衣の鼻先を弾く。
「あからさまに警戒すんなっての」
「いった!」
 思わず目を閉じた芽衣は、僅かに眉間へと皺を刻んでから、音二郎を見上げる。
 瞳に映ったのは、とても柔らかに微笑む彼で。大好きな笑顔だ、と想った瞬間、胸が、きゅっと締め付けられる感覚を味わう。
「来年……」
「はい?」
「来年の誕生日に、今年の分を上乗せしてくれ」
 音二郎が告げた科白は、芽衣にとっては予想外のもので。思わず、瞳を大きく見開いた。
「それで…いいんですか?」
「ああ。来年は、二年分だぞ」
「分かりました! 任せて下さいっ」
 どん、と胸を一つ叩くと、その手を音二郎へ伸ばす芽衣。それから、彼の小指を絡め取る。
「約束」
 ゆびきり、と付け加え、口角を持ち上げた。
 ふっと口許を緩めた音二郎は、顔を耳許へ近付けると。
「とびっきりのを頼むぜ、芽衣」
 甘い囁きを一つ、想いを込め落とす。
 次の年も、そのまた次の年も、一緒に。このまま、ずっと。
 願いを込めて………。

スポンサーサイト
 2015_05_10




プロフィール

一沙(かずさ。)

Author:一沙(かずさ。)

ここは、SSサイトです
アルカナ・ファミリア&三国恋戦記
がっつりネタバレ 
パフェリ、孔花・師弟愛、仲花+孔、
テイルズ、stskなど雑多に書き散らしちう
8/2 オフライン更新
TOASS不定期連載中
初来訪者様はサイト説明必読お願いします
当ブログ内文章及び画像無断転載・複写厳禁
オンラインブックマークはご遠慮下さい。

メールフォーム

参加

検索フォーム




pagetop

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。