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ばれんたいん

Category: 他ゲーム  

2015/2/22 ラヴコレクション2015にて配布したペーパーSS
あやかしごはん・謡凛で、バレンタインネタ。ほのぼのゆったり。



 
  ばれんたいん


 真っ白が虚空に放たれ、ふわりと消える。見渡すもの全てが白に染まる様相は、見慣れた冬の景色。
 その中に、一つ。目を引く橙色があった。
 スコップを片手に、せっせと雪かきをしているのは、謡。少し離れた位置にある石段には、神様が座っていた。
「は? ばれんたいん?」
 雪かきをする手は止めず、問いを投げる。
 徐々に積み上がっていく雪を一瞥してから、神様は、呆れた眼差しを返した。
「知らんのか」
 さも面白くない、と取れる口振りである。張り合いがないのう、と付け加えると、短く息を吐き出した。
 手を止めた謡は、雪にスコップを突き刺すと双眸を細める。
「悪かったな、知らなくて」
 足で、積み上げた雪を踏み固めながら呟く。
 いきなり話を始めたかと思えば、ばれんたんいがどうだとか、正直、どうでもいい。そう謡は、思っていた。
「んなことよりも、手伝えよ」
「か弱い年寄りを使う気か。罰当たりな」
「へーへー、悪うござんした」
 指示された半分も終っていない雪かき。この分では、昼近くまで掛かってしまうだろう。正直、猫の手も借りたいところだ。
 だからって、あの猫は御免だけどな。
 ふいに浮かんだのは、とある猫又の顔で。謡は、気怠げに両肩を落とした。毎度の事とはいえ、どうにも気が滅入る。しかし、流石に、雪かきに応用できる技など持ち合わせてなどいない。
「のう、謡よ。バレンタインについて教えて欲しいか?」
 まだ続いていたのか、この話は。
 少々げんなりとしつつ、謡は、ひらひらと手を横に振った。
「いや、別に。知りたかねえ。つーか、訊いて欲しいんじゃねえの? 神様が」
「そうか、そうか。知りたいか。仕方ないのう、教えてしんぜよう」
 ふふん、と鼻を鳴らし、口角を持ち上げる神様。
 聞こえているのか、いないのか。敢えて無視を決め込んでいるのか、はたまた耳が遠いのか。
 こうなったら、どれが理由でも構わない。兎にも角にも。
「聞けよ、話を」
 低い声色での突っ込みを聞き流し、我が道を行くように話し始めた神様。
「ばれんたいん、というのはな……」
 聞くだけ聞くか、と口を挟むのを止めた謡は、神様が話し終わるのを待つことにした。
 神様曰く。バレンタインというのは、女が好きな男に、チョコレートを贈る日であり、それが今日らしい。元々は外国の風習で、チョコレートではなく贈り物をすることだったらしいが、きぎょうとかの事情で今に落ち着いたとか。
「ふぅーん」
 簡単な相槌を一つ。他には、何もない。そういうものなのか、というだけで。謡は、特別な気持ちが浮かばなかった。
「気のない返事じゃのう」
 またしても、面白くないという口振りだ。
 どのような反応を期待していたのやら。
 謡は面倒臭そうに、ぽつり、と。
「で?」
「で、とは?」
「人間の風習が、どうかしたのか?」
 狛犬である自身には関係ない、と暗に含ませた口調。
 神様は、にやり、と意味ありげな笑みを浮べる。
「お主、まさか、貰っておらんのか? それで、さっきから突っかかってくるのじゃな」
 一人納得をし、全てを見透かしたかのような物言いをする神様に、頬が引きつったのを自覚する謡。
「何わけの分からねえことを……。そもそも、誰から」
「凛からチョコレートを、じゃ」
 ここで、気が付いた。なぜ、この話題を持ち出したのか。相手が己だったのか。つまり、要は確かめたかったのだろう。
 謡は、スコップを握る手に力を込めた。
「そうか、そうか。悲しみのあまり、考えないようにしておるのじゃな」
 大きく頷く神様を見、声を荒げる。
「ちっげーよっ! だいったいっ! 貰う暇なんぞなかっただろうがっ!」
 もっと多くの悪態をつきたくなるも、詠は詠で、今頃、ぽんぽこりんの屋根に降り積もった雪を下ろしているだろう。吟と綴は、周辺の雪かきをすると言っていた。食事の準備を任された凛の背中を見送っての、今である。
 もし、バレンタインを知っており、尚かつチョコレートを貰っていたのなら、踊る気分で雪かきをさっさ終らせていたに違いない。
「陽も登ってねえうちから叩き起こして、雪かきしろだのほざいたのは、どこのどいつだ? てめーだっぶっほ!」
 お誂え向きとばかりに、開けた口へと飛び込んできたのは、雪の塊。少し歪な丸であるのは、手早さ故か。辺りに響いた神様の高笑いに、謡の眉が跳ね上がる。
一気に雪玉を噛み砕いた後、無造作に吐き出した謡は、激昂した。
「なにしやがるっ!」
「口の訊き方がなっておらん」
「うるっせえ! 何度だって言わせてやらぁっ!」
 売り言葉に買い言葉。互いに声量が増した頃、遠くから聞き覚えのある声が届いた。
「うーたぁー」
 こちらへと駆けて来る人物は……
「凛っ! わっぷ!」
 名を呟いた直後だった。
 思わず反応をすれば、その隙をつかれ、再び雪玉を投げつけられてしまったのである。
 雪の中に倒れ込んだ謡に、神様は、これ見よがしの高笑い。
「はっはっはっは! よそ見をするからじゃ」
 いい気味じゃわい、と続け、凛へと向き直った。
 にこやかな顔で立つ神様を前に。
「おはようございます、神様」
 凛は、呼吸を整え、告げる。真っ白な世界に、赤く色付いた頬が鮮やかに咲いていた。
 柔らかな笑みへ、同じように笑みで返す神様。
「うむ、おはよう」
「雪かき…じゃなかったんですか?」
 戸惑いを含んだ問い掛け。
 どうやら、謡とのやり取りを遠目で見ていたのだろう。
 いつから見ていたのか、最中の会話を聞いていたのか。少々気になりもしたが、神様は、深く追求をしなかった。
 無粋であろう……。
 先程までからかっていた癖にどの口が、などと、胸中での呟きを謡が耳にしていれば言っていたかもしれない。
「一区切りついたのでな。運動がてら雪遊びをしておった」
 取って付けた感のある科白ではあるものの、凛は、疑りなど微塵も見せずに。
「じゃあ……丁度良かった、かな」
 言って、手に持っていた物を軽く持ち上げた。
 二つの紙袋と二つの水筒。とても良い香が漂っている。間違いなく、美味い飯の匂いだ。
「おおっ! 弁当か」
 ぱぁっと表情を輝かせた神様は、苦み潰した顔で起き上がる雪まみれの男に声を掛ける。何事もなかったかのように。
「謡、凛が飯を持ってきてくれたぞ。休憩にするか」
 半眼の瞳を軽く投げ、けっと舌打ちをした謡は、まるで犬がするように、全身をぶるりと震わせたのであった。








 雪かきの終った細い道を歩き、小さな社の下まで来た謡と凛。濡れていない部分へ腰を下ろすと、目の前に広がっていたのは白と、その隙間から覗く草木だった。
 雪は、もう降っていない。雲間から顔を出した太陽は、僅かに申し訳なさそうにしている。普段より遅く照りだしたのを謝っているみたいだ。
「はい。謡」
 差し出された包みを受け取り、謡は、いそいそと弁当を開ける。ようやくありつくことのできた飯は、朝食なのか昼食なのか分からない時刻となっていた。が、食べられるのであれば、この際、どちらでも良い。
 おっと、忘れないように………。
 謡は、手をぱちんと合わせ、いただきます、と一言。次いで、手早く割り箸を割り、見目鮮やかな弁当を口へと運ぶ。
 海苔の撒かれたおにぎりの中身は、梅干しと鰹節。甘い卵焼きに、タコとカニの形をしたウインナー。ミートボールはケチャップの味。唐揚げは、絶妙の柔らかさ。
 誰が作ったのか、問わなくても分かる。己好みの味付けばかり。凛以外、誰が作れるだろうか。嬉しさをも噛み締め、謡は唇の両端を持ち上げた。
 かつかつと勢い良く食べる彼の隣で、凛は、水筒のお茶をカップに注ぐ。
「寒くない?」
「んー? そうでもねえ」
「……そっか」
 視界の端に映った赤い耳。けれど、言葉に嘘はない。寒いなら寒いと言う。謡はそういうところがある、と凛は思う。
 と、手をぱちんと鳴らす音が聞こえた。
 二度目の音。けれど、先とは異なる科白が続けられる。
「美味かった! ごちそーさん」
 早い、と胸中で零し、凛は、双眸を瞬かせた。驚きながら、お茶を手渡し、もう一つの水筒を手に取る。
 謡はお茶を一口飲み。
「あれ? 神様は?」
 周囲を見渡した。
 雪の中には、姿が見当たらない。埋もれてないだろうか、と思いもしたが。あの神様に限ってそれはないな、と即座に打ち消す。
「見回りに行くって言ってたよ」
「弁当は?」
「持て行った、けど」
 弁当持って見回り?
 妙だという気持ちは湧くが、気を利かせたのだということには辿り着かない謡。
 そのうち、戻ってくるか。
 ふつりと思考を止めたのは、ふわふわと漂ってきた匂いの所為でもあった。
「なんだ? すっげー甘い」
「えっと……ホットチョコ」
「チョコ? チョコレート……っ!」
 神様との会話を思い出した謡は、その意を察する。
 けれど、あくまでも平静を装うと。
「あ…ああぁ、そっか…ホットチョコな」
 嬉しさに緩んで仕方ない口許を押さえ込み、凛から、ホットチョコレートの入ったコップを受け取った。
 落ち着け。そうだ、落ち着くんだ。
 緩んだ顔なんて凛には見せられねえからなっ!
「知ってるの? バレンタイン」
「か、神様から聞いた」
 照れに負けているが故、謡の変化に、凛は気付いていない。それどころか、赤く色着いた自身の顔を隠すのに必死になっていた。
 そっとはにかみ。
「ありがとう、謡」
 手から伝わる温もりよりも、あたたかな笑顔。
 大好きな凛の表情に、謡の相好が呆気なく崩れる。
「こっちの科白だろ、それ。……ありがとな、凛」
 口の中に広がった甘い味は、もっと甘い口接けに混ざり、雪の色にとけた。

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 2015_03_30




プロフィール

一沙(かずさ。)

Author:一沙(かずさ。)

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がっつりネタバレ 
パフェリ、孔花・師弟愛、仲花+孔、
テイルズ、stskなど雑多に書き散らしちう
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