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ゆめのあと

Category: 他ゲーム  

2014/11/3 ラブコレ秋にて配布したペーパーSS
あやかしごはん 蘇凛と謡凛
シリアスでほのぼの ED後の話
ペーパー用に、長めの話だったプロットの前後を切って纏めました。
ので、そのうち、前後を追加して本にしたい…と思ってます。




 
 夢を見ました
 私は、たった一人きりで
 あなたの姿は、ありませんでした

 夢には、あなたがいませんでした
 一人で ずっとあなたを探していました

 夢を見たのです
 あなたのいない世界で
 私は一人で泣いていました


 おいていかないで






   ゆめのあと ~蘇芳~


 凛は、小さく身動ぎをし、肩に掛かる重みに首を動かした。耳朶を掠めたのは、柔らかな髪。ほんのささやかな感触のくすぐったさに、そっと唇を窄める。
 厭な重さではない。けれど、思うように動けないのは、どうにも困りものだ。短く息を吐き出し、凛は、肩口に顔を置いている人物の名を口にした。
「蘇芳」
 しかし、返事はない。
 軽く首を竦めると、再度、名を呼ぶ凛。
「ねえ、蘇芳。蘇芳ってば。いつまでこうしてるつもり?」
 先よりも、強い口調で繰り返された名前。
 暫くの間の後、ようやく声が虚空に放たれた。
「………厭なのか?」
 ぽつり、と。
 どこか寂しげな呟きに、凛は、一端口を噤んでしまう。返事をしてくれたことに対して安堵したものの、耳に残る声色に罪悪感を覚えてしまった。
「そうじゃ…ないけど」
 厭、ではない。
 蘇芳の温もりを感じることができるのは、むしろ、嬉しい。恥ずかしい気持ちもあるけれど。
「では、このままでいいだろう」
「課題がやり辛い」
 問題ない、と言わんばかりの蘇芳に、即座に返した。
 頬を赤く染めた凛は、蘇芳へと視線を這わせる。机に向かい、椅子に座っている己を後ろから抱き締めている態勢に、疲れないのだろうか、という思いがふつりと浮かんだ。
「なら、しなければいい」
 毎度のこと。お決まりの科白。己を放っておいてする課題など、と彼は決まって言う。
 これまで、攻防戦の末、凛が折れてしまった方が多い。
 つまり、蘇芳に滅法弱いのである。
 が、今回ばかりは、そうはいかない、と凛は、語気を強め告げた。
「そういうわけにはいかないの。それに、蘇芳もちゃんとやっておかないと、また先生に怒られちゃうよ?」
 苦言を呈したのだが、声は返ってこない。
 五月蠅く思っているのだろうか。
 凛は、そっと声をかけてみた。
「蘇芳」
 また、返事がない。
 どうしたのだろうか、と首を傾げた時のこと。耳に届いたのは、微かな寝息のようなもので。
「………え? うそ。寝てる…の?」
 この態勢で?
 双眸を瞬かせた凛は、確認すべく、大きく身動ぎをする。徐々に重さの増してくる蘇芳の身体を支えながら。
 瞳に映った彼は、すやすやと眠っていて。凛は、少しだけ困ったように唇を緩めた後、目尻を柔らかに下げた。無邪気な寝顔に、怒る気力も離す力も、綺麗に削ぎ落とされたのである。
 何か、あったのだろうか。
 いきなりやって来て、ベッドでごろごろして、一人ではつまらないと凛を引っ張り込んだ蘇芳。陽射しの暖かさに眠り込んだ彼を一人残した凛は、途中だった課題を再開した。暫くして、突然飛び起きた蘇芳は、凛を抱き締めたのだった。
 少しだけ前の話。
 結局、抱き締めた理由は、聞けなかったけれど。寝顔を見て、大丈夫になったのかもしれない、と凛は思っていた。
「おやすみ、蘇芳」
 ふわり、と告げる。囁き。頬を撫でるような声。
 凛の声が夢の中に届いたのか。僅かだけ、蘇芳の口角が上がった。










   ゆめのあと ~謡~


 夢で泣いていたのは、誰だったのだろう。
 まるで、この世の終わりのように泣いていた…誰か。
 何かを探して歩き回り、しきりに口を動かしていた。
 名前を呼んでいたのだろう、と泣声以外は聞こえないのに、そう思った。
 私は、その誰かを見ていることしかできなくて。
 とても苦しかった。
 ようやく、泣声以外の声が聞こえた時、心臓を鷲掴みにされたような痛みが走った。
 耳に残った言葉。
 泣いていた誰かの言霊。
 おいていかないで。
 目が醒めた時、頬は、泪で濡れていた。
 私の泪なのに。
 誰かが流した泪のような気がして、名前を呟いていた。
「………謡」
 刹那、私は、彼の姿を探すように部屋を出た。




 何かが近付いてくる気配に、謡は、目を開ける。ぼんやりとした意識は、呆けた声を連れてきた。
「…………んぁ?」
 音が消える瞬間、背後に重みを感じ、朧気だった意識が覚醒する。ぎょっとして振り返った謡の双眸には、見知った黒髪が見えた。
 凛だ、と認識するや、謡の鼓動は、一気に加速する。ばくばくと耳奥で響く心臓の音に比例して、体温が上昇していくのが分かった。
 なぜ、彼女がここにいるのだろうか。
 ここは、己の部屋で。今は、真夜中で。などと、状況を一つ一つ上げながら、理由を考えてみるが思い当るものなど無く。
「っぉ…ぃっ!」
 どうにか絞り出した声は、声にならない掠れたそれだった。
 凛は、ぎゅっと謡の背中の真中あたりの服を握り締める。そして、その近くに額を押し当てると、そのまま動かなくなってしまった。
 夜目の利く謡は、鼓動をどうにか落ち着けさせ、肩越しに凛を見やる。すると、ほんの微かに、彼女の肩が震えていることに気が付いた。
「んだよ。怖い夢でも見たのか?」
 こくり、と首は縦に振られる。
「そっか」
 返したのは、それだけ。
 謡は、他の言葉を口にせず、顔を前へと戻した。
「……ねえ、謡」
「なんだ?」
「夢のこと、訊かないの?」
 至近距離であるからこそ聞き取れる、互いの声。静寂に紛れそうな細さは、今にも闇に飲まれそうで、取りこぼしてしまわないように耳を澄ませた。
 ふっと口許を緩めた謡は、凛の方は見ずに告げる。
「怖い夢だったんだろ? だったら、話すのも厭なんじゃねーかと思ってさ」
「ありがと」
 抱き締める腕はあるけれど、今は、触れることが無粋な気がして。謡は、ただただ、凛の心が穏やかになるように、と祈りを込め、双眸を閉じた。

 翌日。
 共に寝る凛と謡の姿に、他の面々が三者三様に騒いだのは言うまでもない。


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 2015_01_07




プロフィール

一沙(かずさ。)

Author:一沙(かずさ。)

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8/2 オフライン更新
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