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色重ね

Category: 他ゲーム  


SCC23にて配布したパーパーSS。
めいこい・音芽で、まだ両片想い中な二人の話。




 

「へえ~。随分、上手くなったじゃねえか」
 背後から突然聞こえてきた声に、芽衣は、びくりと肩を震わせる。少々大袈裟な動きかもしれないが、それくらい確実に驚いたということだ。
 振り返った先には、こちらに視線を向けている音二郎。半ば感心したような面持ちをしている彼に双眸を瞬かせ、ぽつりと呟く。
「びっくりした」
 窓のそばに居るということは、窓から入って来たのだろう。
 来た、ではない。窓から帰って来た、だった。
 胸中で訂正を入れた芽衣は、おかえりなさい、と声をかけた。






          色重ね






 ただいまと返した音二郎は、芽衣の差し向かいに腰を下ろし胡座を組む。置屋で常である音奴姿ではなく、男としての服装、つまり、スーツ姿の彼が目の前にいた。
 今日は、一日中稽古の為、朝早くから出掛けていた音二郎。夜帳もすっかり下りてしまった今まで、ずっと稽古だったのだろうか、と芽衣は思う。
「いつ帰って来たんですか?」
 目にした様子からすれば、帰った直後という雰囲気ではなかった。もう少し前に帰っていたような気がする。
 実際、何時帰って来ようが、彼の自由なのだが。どれくらいの間、化粧に悪戦苦闘する姿を見られていたのか、というのは、やはり気になってしまうものだ。
 そんな芽衣の心境を察しているのだろう。音二郎は、にんまりと意味ありげな笑みを貼り付ける。
「さっきだよ、ついさっき。お前があんまり面白い顔してっから、見てた」
 からかい混じりの科白の後、口角が持ち上げられた。
 何度も目にしているその表情に、芽衣は、唇を窄める。
「面白い顔って……」
 確かに、音二郎さんみたいに綺麗じゃないけれど。あ、この場合は、音奴さん…かな。
 声にはせず、胸中で続けた呟き。よって、僅かな間が空いた。
 音二郎は、芽衣が気にしている、とでも感じたのだろう。頭にぽんと手を置くと。
「冗談だよ。本気にすんなって」
 声に合わせるように、数度ぽんぽんと軽く叩きつつ。
「真剣な顔、な。ちなみに、こっちが面白い顔」
 言って、芽衣の頬を指先で摘む。両の頬を親指と人差し指でそれぞれ挟み、やんわりと伸ばしながら、笑みを浮べた。
 歯を見せ笑う音二郎とは対照的に、芽衣は、眉を斜めへと変化させる。さほど強く摘まれていない為、痛みは皆無に等しいのだが。見せたくない面白い顔をさせられていることは間違いなく、抗議の声を上げた。
「や、やめてくらさいっ」
 いつもなら、もう暫く猫のじゃれ合いにも似たやり取りが続くところなのだが。音二郎は、ふと目にしたものに、両手を放す。
 眉根をじわりと寄せた後、訝しげな顔となり。
「? どうしたんだ、この紅」
 そう告げると、右手で芽衣の顎を掴み、くいと上向かせる。
 至近距離での動作。少し前までなら、照れと恥ずかしさで慌てていた行為だ。
 けれど、幾度か音二郎に化粧をされたことのある今となっては、慣れたそれの一つと化している。よって、芽衣は、瞳を大きく見開くだけに留まり。
「ふえ? これですか?」
 少々間の抜けた声色で返した。
 と、それなりに空いていた互いの、顔と顔との距離が一気に詰められる。
 流石に、息が肌を転がる程度までともなれば、芽衣も動揺せずにはいられなかったのだろう。ほんのりと頬を赤く染め、吐き出そうとしていた息をごくりと飲み下した。
 そんな芽衣にはお構いなしとばかりに、音二郎は、更に顔を近付ける。
「お前、こんな色持ってたか?」
「えええ、えっとっ! 今日のお座敷で、鏡花さんとの【とらとら】に勝って。その戦利品ですっ」
 慌てふためきながら告げる芽衣に、音二郎の眉が跳ねた。そして、口から零れたのは、地を這うような低い声色。
「鏡花、ちゃん………から?」
 不穏な物言いと奇妙な音。加えて、顔を占拠した不機嫌な表情。
 常ならば、その違和感に何かしら気取る場面である。
 しかし、芽衣の耳は、耐え難い羞恥により、音二郎が発した言葉そのものしか認識しておらず、差異を取り零していた。しかも、双眸をぎゅっと閉じている所為で、その表情を見ていない。
「音二郎さん? あの……どうかしたんですか?」
 目を閉じたままの問い掛けに返されたのは、無言での、とある行動。
「いった! 痛いですっ」
 思わず、芽衣は、声を上げる。
 音二郎が、彼女の唇に塗られていた紅を親指で拭ったのだが。力の加減ができていなかったのだろう。乱暴さの残るそれに、痛みが走ったのだ。
「悪ぃ。似合ってなかったから、つい」
 ぱっと手を放し、音二郎は、左手で芽衣の頭を撫でる。
 謝意のつもりなのだろう。先とは異なる柔らかさを含み、時折、髪を梳いていた。
 大丈夫ですけど、と前置いてから。
「それなら、そう言ってください。自分で落とせます」
 微かに残る紅を手拭いで拭き、芽衣は、そっと首を竦める。
「……やっぱり、似合ってなかったんだ」
 だから、音二郎は、紅を落としたに違いない。
 芽衣が手前勝手な解釈をしていると、頭の上にある手に、僅かだが、力が込められていることに気が付いた。が、耳にした声によって、思考が消える。
「大人気ねぇ………」
「ですよね。私には、大人っぽすぎると思ってました」
 極細での音二郎の呟きに、芽衣がきぱりと続けた。
 途端に、呆けた顔となる音二郎。まさか、聞かれるとは思っていなかったのだろう。
 しかし、上手い具合に取り違えられていることに気付くや。
「あ、あああああ、ああ、そうそう。お前には、こっちで充分だ」
 ぽい、と己が買ってやった紅を放り投げる。
 思わず差し出した手の中に、きっちりそれを受け取った芽衣は、唇に曲線を描かせ、音二郎を見上げた。
「はい。私も、音二郎さんがくれた、この紅の方が合ってると思います」
 屈託の無い笑顔。
 邪気の欠片もない表情に、すっかりと毒気を抜かれた音二郎は、ふっと口許を緩めたのであった。

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 2014_08_11




プロフィール

一沙(かずさ。)

Author:一沙(かずさ。)

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8/2 オフライン更新
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