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色結び


2013/12/30コミックマーケット85にて配布したペーパーSS 
ログホラでシロアカ。(シロ→←アカ)
にゃん太さんが美味しいとこどりで、直継やんが保護者ポジ。




 
 テーブルに置いたものをじっと見つめていたアカツキは、それを手に取り、目と同じ高さまで持ち上げた。小さく揺れ動くさまを追い、眉根を微かに寄せる。
 どれだけ見ても、その形は変わらないというのに。
「…………はぁ」
 吐き出した息が存外大きく部屋に響き渡り、更に気落ちしてしまった。
 手の位置はそのままに、こつり、と額をテーブルに押し当てる。染み込んでくる、ひんやりとした冷たさをいつもは心地よく感じるのに、今日だけは、微かな痛みを伴っていた。
「おーい」
「なんだ? バカツグ」
 ノックもなしに扉を開け放った相手の方は見ずに、アカツキは、酷く低い声色で返す。が、直継は全く動じず、先と同じ口調にて続けた。
「飯だってさ」
「分かった」
 テーブルへ、アカツキが手にしていたものを置いてから席を立つと、視界の端にそれを映した直継が、何とはなしに問い掛ける。
「あれ……もう駄目なのか?」
「ああ。私に修復は不可能だからな」
 言って、アカツキは目線を静かに下げると、部屋の扉を閉めたのであった。


    色結び


「やっぱ、酷く落ち込んでたぞ」
 皆食事を終え、それぞれの部屋に戻ったのだが。直継は留まり、食後の紅茶を飲んでいた。
テーブルを挟み、その差し向かいに座しているのは、シロエ。こちらも、同様に紅茶を口へと運びつつ。
「………そっか。アカツキにしてみれば、珍しいことだし」
「は? お前、何のことを言ってるんだ?」
 眉間に皺を刻み込んだ直継は、手にしていたカップを置くと、半眼の眼差しをシロエへ投げる。
 その視線に、一端首を傾げながらも、シロエは。
「だから、今日の戦闘で」
 よし、と合いの手を入れた直継は、数度大きく頷いてから。
「そこは、あってる。次を言ってみろ」
「いつものアカツキなら、あれぐらいの魔物に苦戦するなんて」
「はい、そこ」
 びしり、と指をさされたシロエは、眼鏡の向こう側にある双眸を瞬かせた。いまいち意味が分からない、というような表情となるや。
「どこ?」
「魔物に苦戦じゃない。こっち!」
「頭?」
 自身の頭を指差した直継を前に、シロエは、まじまじと彼を見ながら答える。
 しかし、これも的外れだったのか。長々と息を吐き出した後。
「わざとか?」
 どうしてこういう時だけいつもの明晰さが働かないんだろうな難儀なヤツだよ、等とぼやいた直継は、軽く両肩を落としてから、改めて自身の頭を指差し。
「結い紐だよ」
「ああ、そういえば、いつもと色が違ったような……」
 半ばぼんやりとした記憶と照らし合わせてみるが、いまいち確証が無い為、声色は曖昧だ。
 直継は、長々と息を吐き出し、やれやれとお手上げの仕草。
 空となっていたカップに、紅茶を注いでいたのは、にゃん太。そっと笑みを零すと。
「シロエちは、そのあたりに関しては、かなり鈍いですからにゃ」
「そんな……。班長まで」
 肯定だけでなく、他の言葉まで付加されていたのを聞き、シロエは、苦笑いを浮べる。どうやら、完全に否定できないらしい。
「気に入りのものだったみたいだけど、自分じゃ元通りにできないんだってさ」
 簡単なものであれば、修復も可能なはずなのだが。できない、となれば。
「職人の手作りですかにゃ」
 作った本人、もしくは、同程度の技能者でなければ無理ということに他ならない。
 多分、と後に続けた直継は、椅子の背もたれに身体を預けつつ。
「あれだけ落ち込んでるところを見ると、相当気に入りの一品だと思うぜ」
 そう言うと、軽く口角を持ち上げる。
「誰かからのプレゼント、とか」
「有り得るかもしれませんにゃ」
 意味ありげに双眸を細めたのは、直継だけでなく、にゃん太もであった。シロエは、顎に手をあてると、ぽつりと呟きを一つ。
「……プレゼント、ねえ」
 そのまま黙り込むと、視線を僅かに下げた。



 ノックに振り返ったアカツキは、プレートを手に立つにゃん太を見て、僅かに驚きを覗かせる。彼が、訪ねて来るとは思って居なかったらしい。
「夕飯をあまり食べていなかったので、そろそろ小腹が空くのでは、と思ったのにゃ」
「ありがとう」
 テーブルに置かれたのは、温かなスープ。鼻腔をくすぐる匂いに、腹の虫が大きな声で鳴き出しそうな気がして。アカツキは、腹を押えながら、照れ混じりに謝意を述べた。
 ほんの一掬い口に入れた途端、広がった味は、ほっぺたが落ちてしまいそうなもので。じんわりと口許をほころばせる。
「………美味しい」
「それは、良かったにゃ」
 柔らかに微笑んだアカツキを見、にゃん太は、目尻を下げた。
 部屋の奥にあるサイドチェスト上には、直継が話していた結い紐がある。今日の戦闘中、相手から放たれた一撃によって切れてしまったのであるが。もし、僅かでも軌道が異なっていれば、彼女自身が傷を負ったか、或いは、髪がばさりと結い紐のように切れていたかもしれない。
 そう考えると、結い紐だけで済んで良かったのだろうけれど。にゃん太は別の言葉をアカツキへと投げ掛けた。
「大切な物……だったのかにゃ?」
 こくりと頷いたアカツキは、経緯を告げる。一目見て気に入ったが、丁度手持ちが無く、報酬を受け取るまで店主に待ってもらい、ようやく手に入れたのだ、と。
 喜びも一入だったらしく、それ以来、ずっと身に着けていたというのだ。
「形在る物はいつか壊れる。だから、仕方のないことだと分かってもいる。それでも、やはり………」
 段々、アカツキの声が小さくなり、やがて、消えてしまった。
 にゃん太は、サイドチェストへ歩を進めると、切れてしまったその結い紐を手に取る。
「預からせてもらってもいいかにゃ?」
「………えっ」
「悪いようにはしないのにゃ」
 双眸を瞬かせるアカツキに、にゃん太は、にこりと笑みを向けたのであった。
 それから、数日後のこと。にゃん太が、アカツキの前に差し出したのは、切れてしまった結い紐と同じ模様の一品だった。しかも、可愛らしく、先に細工のあるガラス玉が付いていたのである。
「おっおおおおおっ! こ、これは………っ!」
「組紐といって、色紐を編んで作ったものですにゃ」
 今度は、懐から、切れていた結い紐を取り出し。
「あの結い紐は、飾り紐に作り替えてみたのにゃん。こうして…こうすれば………どうですかにゃ?」
「ほあぁぁぁっ」
 組紐を髪へと結び、作り替えた結い紐を剣の束に結んだ。
 まるで、揃いの一品となったそれらに、アカツキは、瞳を輝かせる。鏡の前に立ち、新しい結い紐と剣の束のそれを何度も交互に見ていた。その仕草に、にゃん太は、にこにこと微笑む。
「喜んでいただけたようで、なによりですにゃ」
「ありがとう、老師に、このような特技があるとは………老師?」
 なぜか、やたらと笑顔であるにゃん太に、アカツキは、眉根を寄せたのであった。


「主君っ! 礼を言いに来た」
 いきなり部屋を訪れたアカツキに、シロエは、双眸を丸くする。が、礼という言葉に、思い当る事柄は一つきりしかなく。
「………班長から聞いたの?」
「私が、口を割らせた。老師に非はない」
「どうだか」
 にゃん太が、含みのある素振りをしていたに違いない。シロエには、容易に想像できた。
ともあれ、固く口止めをしたわけでもないのだから、この結果にならない方が可笑しいのかもしれない。
「それよりも…その……ありがとう」
「こちらこそ、かな。いつも、アカツキには色々世話になってるから。お返しみたいなものだよ」
 照れ混じりにはにかんだアカツキへ、シロエも笑みで返す。
「いや、主君に世話になっているのは、私の方だ」
 そうかな、そうだ、と互いに引く様子は微塵もない。
 と、シロエは、ぴっと人差し指を立て。
「これからもよろしくの、前払い込みっていうのは、どうかな?」
「前払い、か………分かった。相応の働きを期待していてくれ」
 納得したアカツキは、とんと自身の胸を叩いてから、軽く反らせた。
自信ありげな表情に、シロエは、双眸を弓なりとする。
「頼もしい言葉だね」
「どんどん頼るといいぞ」
「そうさせていただきます」
 言葉終りに、二人は、笑い合ったのであった。

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 2014_02_02




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一沙(かずさ。)

Author:一沙(かずさ。)

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